建築家、田村隆雄さんの改修デザイン

田村隆雄さんの今回の改修デザインで特徴的なところは、建具を、自然の光そして明かりのコントロール装置として、やわらかく美しく、精神的な安らぎの空間を創造していることです。また、建具の一つは、哲学者のヴィトゲンシュタインの建築を想起させます。田村さんが、彼を意識していたかどうかは不明ですが、動く壁である建具が、いかに建築空間にとって重要なものであるかを示唆しています。


江名港前の住宅の改修
田村隆雄 田村建築設計事務所

この建物は福島県いわき市の江名港前にあり、東日本大震災の津波により1階の床上2mまで浸水しました。
施主は70代の夫婦と2人娘の4人家族で、継続してここに住むことを希望していました。鉄筋コンクリート造で、幸い躯体にひび割れ等の損傷はなかったので、1階部分をすべて改修しました。間取りの変更は行なわず、床・壁・天井の仕上材および建具の変更を中心に設計しました。
1階は和室のまわりにエントランスホール、仏間、台所、ダイニングルームが配置されていて、和室がこの住宅の要
となっています。また、ダイニングルームから図の矢印の方向に視線が大きく抜けかつ、洋→和→ 洋と様式が変化
します。
改修により、ダイニングと和室間の扉をふすまから透明ガラス入りの引戸にしました。床については、ダイニングは絨毯、和室は畳でしたが、両室ともに朝鮮張とし栗材を選びました。このことで、両室の自然なつながりができたと思っています。
和室とエントランス間の扉をふすまから、太鼓張の障子としました。昼はエントランスからの自然光を和室に導き、夜はこの障子が和室の光で大きな行灯のように光ることで、エントランスの間接照明としました。
この和室は、日常的には使わないとのことなので、イベント・集会場としての使用を提案しました。2013年9月には、和室とエントランスホールを一体として使用し、東京藝術大学準教授 大塚直哉氏によるクラヴィコードの演奏会を行いました。




















資料提供 田村建築設計事務所
問い合わせ先 田村建築設計事務所 田村隆雄(早稲田大学招聘研究員)
       〒171-0033 東京都豊島区高田1-36-13-211 電話 03-3985-7222